大人の初心者が絵を描けるようになるための始め方
「絵が描けない」と思っている大人のための、落ち着いて続けられる実践プラン。必要な道具、大切な3つの力、1日15分の練習、最初の1か月の進め方をまとめました。

大人になってから「絵の練習は何から始める?」と迷ったら、答えは思っているよりずっとシンプルです。身近にある簡単な物を、紙の上に1日15分ほど描くこと。細部より先に大きな形と比率を見る練習をすること。そして、自分の絵を週ごとに見比べて上達を確かめること。始めるのに才能も、タブレットも、絵画教室もいりません。必要なのは鉛筆と紙、そして初日から無理をさせない計画だけです。
このガイドでは、その計画をお伝えします。そろえる道具(ほんの少しです)、絵がそれらしく見えるための3つの力、短い毎日の練習、最初の1か月の週ごとの進め方、先生がいなくても自分の絵をチェックする方法、そして大人の初心者がほぼ必ずつまずくポイントを順に見ていきましょう。
絵は練習で身につく技術です
「絵が描けない」という大人の多くは、10歳から12歳ごろに描くのをやめています。自分の絵が、目に見えているものと似なくなってきた時期です。その差は才能のなさではありません。よく見ること、測ること、濃い線の前に薄い線を置くこと。そうした技術を、ただ練習してこなかっただけなのです。
うれしいことに、これらの技術はとても具体的です。ひとつずつ練習でき、紙の上で上達を目で確かめられます。このガイドは、その考え方を土台にしています。
必要なもの(と、まだいらないもの)
まずは引き出しにあるもので始めましょう。道具をそろえるのは、楽しいとわかってからで十分です。
- 鉛筆。 最初の1週間は、ふつうのHBの鉛筆で足ります。買い足すなら、薄い下描き線用のHBと、濃い陰影用の2Bか4Bを。
- 消しゴム。 きれいな消しゴムなら何でも使えます。練り消し(灰色でやわらかく、こねて使うもの)なら、紙をこすらずに黒鉛を取れます。
- 紙。 コピー用紙で問題ありません。シンプルなスケッチブックなら絵が順番どおりに残るので、あとで上達を見返しやすくなります。
- 鉛筆削りと、横から照らすライト。線がよく見えるようにするためです。
- 身近な実物。 マグカップ、りんご、本、靴。じっとしていてくれる、とても正直な先生です。
まだいらないもの: ペンタブレット、高価な鉛筆、特別な紙、講座。紙から始めるのがいちばんです。引いた線がそのまま残るので、「元に戻す」ボタンよりも早く線のコントロールが身につきます。
絵がそれらしく見えるための3つの力
「なんだか変」と感じるときは、ほとんどの場合、次の3つのどれかがうまくいっていません。どれがつまずいているのかに気づけるようになれば、次に何を練習すればいいかが、いつでもわかります。
1. 大きな形を見る力
初心者は、物を「こういうものだ」という思い込みで描きがちです。目の記号、ハート形の葉っぱ。描ける人は、実際に見えている形を描きます。描き始めはいつも、いちばん大きくて単純な形を、ごく薄い線でとらえましょう。マグカップなら円柱と2つの楕円と取っ手、猫ならいくつかの円と楕円です。細部は最後です。
鉛筆で描くマグカップのレッスンでは、数本のアタリ線から完成まで、まさにこの流れを見ることができます。
2. 比率を測る力
比率とは大きさどうしの関係のことです。高さは幅の何倍か、ある部分は別の部分に対してどこにあるか。腕をまっすぐ伸ばして鉛筆を持ち、片目を閉じて、鉛筆で見比べます。「マグカップの高さは、幅の1.5倍くらい」。角度も同じように確かめます。最初は測るのに時間がかかりますが、驚くほど早く自然にできるようになります。
3. 明暗(明るさと暗さ)
明暗の度合いを「値(バリュー)」と呼びます。紙の白から本当に暗い黒まで幅がある絵は立体的に見え、中間のグレーばかりの絵は平たく見えます。モチーフを目を細めて見てみましょう。細部が消えて、大きな光と影の形がはっきりします。そこから陰影をつけていきます。陰影をつけたりんごのレッスンは、明暗の最初の練習にぴったりです。
1日15分の練習メニュー
少しずつ毎日のほうが、たまにまとめて長くやるより効果的です。1日15分なら始めるハードルが低く、練習と練習のあいだに目と手が育つ時間もとれます。
| 時間 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 0〜3分 | ウォーミングアップ: 紙のすみに直線、円、楕円を、肩から腕を動かして軽く描く | 線のコントロールと力の抜けた手 |
| 3〜13分 | 簡単な物をひとつ描く: 大きな形、次に比率、次にいちばん大きな影 | 3つの力をまとめて練習 |
| 13〜15分 | 少し離れて実物と見比べ、明日直すことをひとつメモする | はっきりした次の一歩 |
描いた絵には必ず日付を入れましょう。1か月後、その日付がスケッチブックのなかでいちばん励みになります。
最初の1か月、週ごとの進め方
これはスタートのための枠組みで、競争ではありません。簡単に感じたら先へ進み、難しく感じたら同じ週をもう一度やりましょう。
| 週 | テーマ | 描くもの |
|---|---|---|
| 1 | 薄い線と単純な形 | マグカップ、箱、本、お椀 |
| 2 | 比率と角度 | 靴、椅子、ライト、植木鉢 |
| 3 | 光と影 | りんご、卵、洋なし、ライトひとつで照らした丸めた紙 |
| 4 | 写真を見て描く | ペット、観葉植物、お気に入りの物、シンプルな顔 |
4週目からは、実物から写真へ移ります。写真は動かず光も選べるので便利ですが、奥行きがわかりにくくなります。週に1回は実物を描き続けましょう。
写真を見て描くときは、少しだけガイドを
写真を見て描くときは、光が片側から当たっていて、背景がシンプルで、モチーフが画面いっぱいに写っているものを選びます。そして同じ順番で分解します。大きな形、比率、明暗、細部です。
ここでガイドが役に立ちます。Sketchwiseは、選んだどんな写真も、ステップごとのガイド画像つきの段階的なレッスンにしてくれるので、次にどの線を引けばいいかがいつでもわかります。描くのはあくまで本物の紙の上で、スマートフォンは紙の横に立てておきます。任意の途中チェックで紙を撮影すれば、小さなミスが積み重なる前に具体的なアドバイスがもらえます。完成後の点数つきの最終レポートでは、比率、陰影、正確さが評価され、次に練習するドリルも提案されます。難しく感じるステップでは、なぞりモードがカメラのライブ映像にガイドを重ねて表示するので、紙と位置を合わせられます。
まずは用意されたレッスンを試したい人は、絵の描き方ガイドをのぞいてみてください。実際のレッスンの全ステップを、最初の薄い形から完成まで見ることができます。
自分の絵をチェックする方法
先生がいないときは、自分の絵を新鮮な目で見る工夫が必要です。次の方法はすぐに効果があります。
- 離れて見る。 絵をモチーフの横に置き、2メートルほど離れて両方を見比べます。比率の狂いは、距離をとると目に飛び込んできます。
- 反転させる。 鏡に映して見るか、写真に撮って左右反転させます。脳が「こう見えるはず」という補正をやめるので、実際に描かれているものが見えます。
- 目を細める。 絵とモチーフの、大きな明るい部分と暗い部分を比べます。細部は気にしません。
- もう一度測る。 いちばん大事な2つの寸法を選び、鉛筆で確かめます。
- 直すことをひとつだけ決める。 5つではなく1つ。次の絵のための、はっきりした課題をひとつ。
初心者がほぼ必ずつまずくポイント
- 細部から描き始める。 完璧な目でも、位置がずれていれば変に見えます。まずは大きな形から。
- 最初から強く描く。 早い段階の濃い線は消しにくく、ミスを固定してしまいます。薄く始めて、確信が持てたところだけ濃くしましょう。
- 見ずに記号を描く。 葉っぱや目の「イメージ」ではなく、見えている形を描きます。
- 何でも輪郭線で囲む。 実物の境目は光と影でできていて、黒い線ではありません。
- 想像だけで描く。 想像は、まだ育っていない頭の中の資料に頼ることになります。観察がその資料を育てます。
- 早すぎる判断。 うまくいかなかった1枚は情報であって、判決ではありません。今日の絵をプロの作品と比べるのではなく、1週目と4週目を比べましょう。
よくある質問
才能がなくても、大人から絵は上達しますか?
上達します。説得力のある絵を支える力(形を見る、比率を測る、明暗をコントロールする)は、何歳からでも身につけられます。大人は目的をもって練習し、自分のミスに気づけるので、着実に伸びることが多いのです。
絵の上達にはどれくらいの時間がかかりますか?
決まった期間はありません。期間を約束する人がいたら、それは推測です。最初に変わるのは、たいてい「見え方」です。以前は見落としていた形や角度、影に気づくようになります。日付入りの絵を残して、数週間ごとに見比べるのが、いちばん確かな物差しです。
練習は紙とタブレット、どちらで始めるべきですか?
紙から始めましょう。シンプルで、一本一本の線に責任を持つ練習になり、身につけた力はあとでデジタルにもそのまま生きます。タブレットが増やしてくれるのは道具であって、基礎ではありません。
最初は何を描けばいいですか?
形がはっきりした、シンプルでかたまりのある物です。マグカップ、りんご、本、箱。そのあとで、部品の多い物(靴、植物)へ進み、顔や人物はもっと後にしましょう。
絵画教室に通う必要はありますか?
必須ではありません。もちろん良い教室は助けになります。はっきりした練習メニュー、実物のモチーフ、正直に自分の絵をチェックする方法があれば、ひとりでもかなり遠くまで進めます。先生の代わりになる部分は、段階的なレッスンが補ってくれます。


